10月号
まだ春の訪れも遠い2月に始動しはじめた今年の「うた会」制作。それからもう、あっという間に半年以上経ってしまいました。こんなに長い期間をかけて、一体何をしているの?と思われるかもしれませんが、かかってしまうのが舞台制作なのです。「制作マニュアル」などあるわけでもないので、制作会社は各々の方法で舞台創りをしていると思いますが、とにかく初日を迎えるまで、長い長い道のりなのはどこも同じです。
どのように「うた会」が創られていくかといいますと――まずは、今年の作品のコンセプト、スタッフ等に関しての検討、予算だて、チラシ作成・チケット委託などの全体のスケジュール――といった大枠を決めていきます。そして、実際にスタッフ陣との打合せへと突入していくわけです。
稽古が始まるまでは、こういった打合せに関わるスタッフはまだ数人だけですが、これだけ長期間に渡るので、その間、各々別の仕事を抱えながらとなるわけです。ですから、大抵の打ち合わせは、全員のスケジュールをぬってようやく集まれる夜に行うか、もしくは夜な夜なの留守電&ファックス合戦となります。とにもかくにも、みんなバイタリティのある人達だなと感心してしまいます。
オリジナルの作品の場合、まさに「無」からの出発となりますから、最初の頃は、打ち合わせと称して会っても、その日のうちに決定する事柄はほとんどありません。宿題となっている資料集め、その内容の検討などなど、時間はかかれど、事は進まず状態。一番モンモンとする時期です!
今年は、そんなこんなで、7月に台本の初稿があがりました。ここから、音楽や人物の動き(心身共に)などもからめて、内容を掘り下げていきます。
では、最近の状況はといいますと……。
■9月○日 珍しく夕方。音楽打ち合わせ。
「音楽の打合せは、何となく皆の表情がやわらぐ。仕事ながらも人を和ませてしまう、その力は偉大だ! でも実は、各々が密かに、お気に入りの曲を資料と称して偲ばせていたことにも原因があった。これらは、当然のごとく採用されず却下された。音楽監督曰く、『今回は、今までに剣さんが歌っているものとは、違うイメージの曲にも挑戦してもらいたい』とのこと。曲のリストもほぼ出揃い、どれも聴いているだけでワクワクしてくるナンバーばかり。でも、まだナイショである。」
■9月△日 いよいよ台本直し終盤。
「スタッフのスケジュールがなかなかあわず、ファックスでのやりとりが続く。主に台本の変更内容。今日、演出家と脚本家へ長いファックスを送った。明日の朝、その倍返しがあるのではないかと、小心者の我々はドキドキする。倍返しでも、“却下”でなければまだ良いのだが……。早く進めねばと焦る一方で、すぐには返事のありませんようにと、矛盾した心境で祈る。」
このように現在、11月から始まる稽古に向けて、最終の調整をしております――ご覧になる皆様に「元気」になっていただくには、つくり手も「元気」でいることが一番!を合言葉に。